ソーシャル・イノベーション・スクールは、多くの企業から高い評価をいただき、サステナビリティと人材育成の分野で共に未来を切り拓くパートナーとしてご活用いただいています。今回は特別編として、開校当初から講師としてお迎えしている、株式会社JEPLAN(ジェプラン) 共同創業者 会長の岩元 美智彦様(本社:神奈川県川崎市)に米倉学長がお話を伺いました。

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石油に頼らない循環社会へ──100%リサイクルを実現するケミカルリサイクル

米倉学長(以下、米倉):
今日は、講義や工場見学でいつもお世話になっている、JEPLAN(ジェプラン)の岩元会長にお話を伺います。JEPLANといえば、プラスチックやペットボトルを科学的にリサイクルしていることで知られています。ご存じの方も多いと思いますが、まだ知らない方もいらっしゃるかと思いますので、まずはJEPLANについてお話しいただけますか?


岩元会長(以下、岩元):
JEPLANは「ケミカルリサイクル」という技術を用いてリサイクルを行っている会社です。従来の「物理的リサイクル(使用済のプラスチック廃棄物を、収集後に洗浄分別して原料として使用する方法)」とは異なり、科学的に分解・再生することで、ほぼ1対1で資源を変換できるのが特徴です。つまり、新しい資源を使わずに循環できる仕組みを実現できるわけです。

この技術をもとに、私たちは世界最大規模の工場を川崎に建設しました。おかげさまで、現在は50を超える自治体と直接契約し、「地上資源だけで循環する社会」をともに実現していこうという動きが広がっています。ようやく社会全体がこの考え方に追いついてきてくれて、私が目指してきた社会像に現実味が帯びてきた、そんな手ごたえを感じているところです。

120万円から120億円へ──JEPLAN創業と“世界最大”ケミカルリサイクル工場の挑戦


米倉
岩元さんがJEPLANを創業されたのは、今からどれくらい前になりますか。

岩元
2007年ですから、もう18年ほどになります。当時は資金がなくて、資本金120万円で立ち上げた会社なんです。

米倉
120万円ですか?

岩元
はい、120万円です。それが現在では140億円規模の資本金になりました。

米倉
我々も川崎工場を見学しましたけれど、本当にすごいですね。

岩元
ありがとうございます。工場自体は大きいですが、世界の化学工場と比べれば“世界最小”なんです。ただし、ケミカルリサイクル工場としては“世界最大”になります。通常、石油から化学品をつくるプロセスでは、大量生産によってコストを下げる必要があります。うちの工場は年産約2万トンですが、これが10万トンを超えると石油由来の価格帯に並ぶんです。

米倉
同じくらいになるんですね?

岩元
そうなんです。そこを肌で実感していただけることが大事だと思っています。工場をつくって「まだ高い」と言われたり、「コンセプトはわかるけど…」と言われるよりも、この規模を少し拡大するだけで「もう石油はいらない」と見せられるようになった。ようやくそういう段階に来ました。

地上資源で世界平和を ― JEPLANが切り拓く未来

米倉:
初めてこの取り組みを知る方のために説明すると、これまでの考え方では、地下資源を掘って石油を作り、それをペットボトルに加工するという流れが一般的でした。しかし会長は、地下資源だけに頼る必要はなく、地上にも十分な資源があると考えています。例えば廃棄されるペットボトルなどを循環させることで、新たに資源を掘り起こす必要がなくなります。 そうすれば資源を巡る争いや戦争も起こらない、というのが理念ですよね。

岩元:
そうなんです。CO2も減らせます。先生には実際に工場を見てもらいましたが、例えば、うちの工場の2倍ぐらいの規模の工場が北海道に一つできれば、北海道の人たちは二度と石油を使う必要がなくなるんです。工場を見てもらうと、そのスケール感を実感できます。

僕がよく言うのは、世界平和や地球環境の問題は、国連や国、誰かがやるものだと思われがちですが、実は違うということです。この120万円で作った会社でも、実現できるんです。北海道にもう一つ同規模の工場があれば、石油を使わなくて済む。つまり、地球環境や世界平和は、そんな規模感でも実現可能で、決して難しい話ではないんです。こういうことを全国の自治体にも伝えています。「こんなに簡単にできるのに、なぜやろうとしないのか」と。

米倉:
普通のリサイクルでは難しいんですよね。

岩元:
物理的リサイクルだと、世界の平均は8割程度しか使えません。
熱を加えて樹脂を再生する場合も、世界の平均はよくて2回しか再生できません。でも、うちの方法だと物質が劣化しないので、10回でも100回でも1000回でもほぼ1対1で再生できる。つまり、石油に頼らなくても済むんです。この差は大きいですね。

さらに先日、資源有効利用促進法改正案が国会で通りました。地上資源を循環させる取り組みを推進する法律です。2026年4月1日に施行されます。ヨーロッパでは既に進んでいて、ペットボトルのリサイクル率を一定以上にすることが義務付けられており、基準を満たさなければ石油由来のプラスチックに税金がかかります。再生材を活用できるよう補助金も出る予定です。
私も委員会のメンバーとして関わりましたが、10年かけて構造を変えられたのは大きな成果です。

学びから実践へ ― 『知る』ことが社会を変える第一歩

米倉:
この流れは止まらないですね。僕たちの周りでも、もう本当に誰もがペットボトルで飲んでいますし、それを無駄にしているのは、まさにありえない世界です。

岩元:
テクノロジーがなかったら仕方ないけど、できるのにできない。しかも手の届く価格になってきていますし、量が大きくなれば石油価格にも影響を与えられる。それをしない大人なんて信じられません。だから各自治体にお願いして、一緒にやろうと声をかけ、今では50を超える自治体さんがやっとここまで来ました。

米倉:
なるほど。我々ソーシャル・イノベーション・スクールも、こうした授業や地方再活性のための支援など、さまざまな活動をしています。その理由は、何もしなければ状況は後退するからです。
1人が1mmでも前に進めることが大事です。岩元会長が率いるJEPLANも、我々は非常に応援しています。お話を聞いたり、工場見学をさせていただいたりしていますが、こうした学校の存在について、実務家としてどう感じますか。

岩元:
いいですね。まず勉強して知ることが大事で、次に学んだやり方をもとに動くことが重要です。
先生と一緒に多くの人を育て、まず知って実践者になり、社会課題を解決していく。こうした基本姿勢が、この学校にはあると思います。私も一緒にやらせていただきたいと思っています。

米倉:
ぜひ。おっしゃる通りで、知らなければわかりません。我々が平気で使っているペットボトルも、1対1で変換できるなんてことは、ほとんどの人は知りませんよね。

岩元:
そうです。1対1の変換が可能だということを、誰も知らないんです。

世界に『日本があってよかった』と言われる未来へ

米倉:
そうすれば、新たに(地下資源を)掘る必要もありませんし、中東を巡る戦争など、資源を巡る争いもなくなりますね。今はアフリカでも同じようなことが起きています。

岩元:
日本に唯一ないのは資源だけです。ものづくりや教育、コミュニティなど、その他の面では非常に恵まれています。しかし、原油の輸入で20兆円以上、為替の影響で30兆円の貿易赤字になることもあります。それを1兆円でも2兆円でも削減して国内投資に回せば、非常に良い循環が生まれると思います。
制度や技術が整い、市民のマインドや行動が変われば、日本から世界に良い発信ができるはずです。この学校がそのベースとなり、広がってヒントや事例を提供できれば、皆さんにも参考にしていただけると思います。

米倉:
ありがとうございます。我々のスローガンは「世界に日本があってよかった」と思われたい、ということです。この技術もきっとその日が来ます。JEPLANさんが開発してくれてありがとう、と言われる日が。
環境ムーブメントというよりも、ビジネスの最先端を走るJEPLANの岩元 美智彦会長に、今日はお越しいただきました。


【企業情報】
株式会社JEPLAN
Webサイト:https://www.jeplan.co.jp
JEPLANグループは「あらゆるものを循環させる」をミッションに掲げ、サーキュラーエコノミーの実現を目指しています。廃PET(PETボトル、ポリエステル繊維等)を対象に、独自のPETケミカルリサイクル技術を用いて分子レベルに分解し、不純物を除去することで、石油由来と同等品質の再生素材に生まれ変わらせています。この独自技術を用いて、リサイクルに取り組むことで、限りある資源の循環を実現し、CO₂の排出量削減にも寄与しています。