今回はSISを受講したのちに、起業へとステージを移した第3期卒業生(東京校)の山川さんへインタビュー。2023年8月に起業され、ITソリューションの導入や運用・保守、コンサルティングサービスの提供をベースとした事業展開をされています。『ベトナムの失業率改善と日本の労働生産性改善』をテーマにした卒業課題を経て、起業に至った経緯や、今後の展望について詳しく伺いました!

ハノイ大学にて講義をした際の様子と大学前にて撮影
ハノイ大学にて講義をした際の様子と大学前にて撮影

──SIS(シス)に通おうと思ったきっかけを教えてください
2021年春に起業のアイデアを思いつきましたが、コロナ禍でスタートできる環境ではありませんでした。何か準備をしようと考えていたところ、中学・高校の同級生が「ソーシャルビジネスを学ぶ学校を卒業しました!」とSNSに投稿していたのをみて、自分も行ってみようと思いました。

──受講の決め手となったポイントを教えてください
ソーシャルビジネスを学べる数少ない学校であることが大きな決め手でした。また、現場で活躍するソーシャルビジネスの専門家から直接レクチャーを受けられることや、米倉学長の鋭い意見を聞けるという点も魅力的でした。

20年前の志を思い出す

──起業しようと思ったきっかけはなんでしょうか
外資系IT企業で約20年勤めていたさなか、新型コロナウイルス感染症の流行により在宅勤務が増え、自分を見つめ直す時間が増えました。
話は遡りますが、大学生の頃にMicrosoft Windows 95がでて、 個人にもコンピューターが身近な存在となり、ソフトやアプリケーションを用いていろいろなものを作っていく機運が生まれていた時代でした。父がコンピューター技術者であったことも影響し、『人を豊かにするために、コンピューターやITの活用を目指す』ことを心に誓い、最先端の技術を学ぶためにアメリカへ留学しました。
しかし、父が他界し日本に帰国することを余儀なくされます。まずは自分が稼がなきゃいけないと、外資系IT企業で仕事中心の日々を送り続けていました。
そんななか、コロナ禍を契機に、これまでの20年を振り返り、自分が留学前に抱いた志を思い出しました。

──そこからどうやって起業の準備や今の事業を進めていきましたか
起業すると決めてから、コロナ以前に出会った日本在住のベトナム人女性のことを思い出しました。ベトナムでは日本語や英語などを学び、自己啓発に励んでいるにもかかわらず、収入が高くなく、物価の上昇も伴い豊かさをあまり感じられない方が多いと聞きました。
一方、日本では大きな努力をせずに安定した生活ができる人々が多いことに気づき、その不公平さに心を痛めました。
ベトナム人が日本語という難しい言葉を学んでまで努力しているのに、報われない現実に対して何かできないかと考えたとき、ITソリューションの導入、運用、保守を日本とベトナムから行うソーシャルビジネスのモデルを考えつきました。日本人とベトナム人がチームになって取り組み、現地での良質な雇用創出と利益をもたらすことを目指しました。

2年の準備期間を経て起業

そこから、会社設立の手間や費用、ベトナムでの市場調査、人件費、給与水準、日本語を話すベトナム人の割合など、必要な情報を徹底的に調べました。その結果、このビジネスモデルに競争力があると確信し、起業に向けて動き出しました。2023年7月に会社を退職し、その翌月に起業しましたが、実際には同年5月から勤務していた会社の仕事に支障がない範囲で、起業の準備を進めていました。
当時、SISの卒業課題でも発表しましたが、講評で高い評価は得ませんでした。それもあって、より自分のビジネスモデルに確信を持つために、ボーダレス・ジャパン運営の社会起業家を輩出する学校ボーダレスアカデミー(以下、BA)への受講も決めました。SISでは基礎を学び、グループワークをもとにアウトプットを行うプログラムが中心ですが、BAは実際に起業を前提としたプログラムで、共に学んだ仲間の多くが実際に起業準備を始めており事業内容もさまざまでした。私も最初は副業的にスタートし、後に株式会社へと変更しました。他の受講者も合同会社や個人事業主としてスタートする人が多かったです。事業規模は小さいものが多く、みんな基本的に1人や友人と2人で始める規模でスタートしています。

メンバー同士が楽しく協力しあえるチームづくり

──現在の組織体制について教えてください
日本で2名、ベトナムでは3名の社員を採用しています。ベトナムのメンバーは2023年秋から採用しています。採用は、現地の人材紹介会社を利用しました。今年は新たに日本で5名、ベトナムで5名ほど採用する予定で、さらなる拡大を目指しています。

──日本人社員を採用するときに、スキル以外に大切していることはなんでしょうか
一人ひとりの経験や適性を考慮しつつ、1番大切にしているのは、ベトナムのメンバーとともに仕事ができるかどうかです。プロジェクト単位でチームを構成する際、日本人1名につき、ベトナム人1〜3名のスタッフをアサインし進めます。円滑な進行はもちろんのこと、メンバー同士が楽しく協力しあえるチームづくりを大切にしています。

──ベトナムにも事務所を構えているとのことですが、現地では具体的にどんなことをしていますか?
基本的には現地メンバーの支援が主な役割ですね。オンラインでのコミュニケーションも大切ですが、直接顔を合わせることが関係性や信頼構築には欠かせません。実際にメンバーに会いに行って対面で話をすることもあります。私が現地の代表も兼任しているため、運営のための手続きや銀行口座の手続きなど、現地の事務作業もしています。

ベトナムにて、社員との集合写真

──まもなく起業から1年が経ちます。今の気持ちをお聞かせください
社会課題に対するビジネス解決策の仮説が正しかったという実感があります。ベトナムのメンバーと話していると、彼女らがこれまで豊かさを実感できていなかったと感じることがあります。例えば、採用した最初の社員は、経験豊富な経理のスキルを持っていましたが、就業の機会が少なく、失業状態でした。これは社会課題だと感じ、彼女を雇用することで課題解決に貢献できたと考えています。ビジネスの面では、日本人メンバーがフロントに立ち、ベトナムのメンバーがサポートする形でうまく進行しています。苦労している点は、まだ会社の信用が十分ではないことです。特に取引や口座開設などで企業規模が小さいことがハンデとなることがあります。
顧客の拡大については、現在は主に他社の下請けとしての契約が中心ですが、顧客との直接お取引の可能性も探っています。私の会社はSAP社のソフトウェアを活用した情報システムの構築を行っており、今後は規模を拡大して多くのお客様に価値のあるITサービスの提供を計画しています。

多国展開を目指す

──今後の展開を教えてください
現在は日本のお客様向けに、日本とベトナムのラインが活躍していますが、このモデルが確立したら、他の国にも同様の展開を考えています。具体的にはフィリピン、インドネシア、ミャンマー、そしてカンボジアです。この4カ国を最初に考えており、将来的にはバングラデシュ、ネパール、スリランカ、そしてインドなど、南アジアも視野に入れています。
現在は日本のお客様向けのサービスが中心ですが、日本の経済や人口の減少に伴い、将来的には海外のお客様に向けたサービスの必要性を感じています。具体的にはオーストラリアとニュージーランドに注目しています。これらの国は、時差が少ないため日本との連携がしやすく、また、外国人に対する抵抗感も比較的少ないという利点があります。
また、現在は統合基幹システムの構築や経費精算などの領域でソフトウェアを活用したITサービスの提供を行っていますが、今後はビジネスインテリジェンスや顧客関係管理、人事労務などの分野にも展開していきたいと考えています。さらに、ベトナムを中心とした日本語人材がオンラインでの業務を通して活躍できるよう、ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)にも注力し、経理業務や人事労務業務などを受託していきたいと思います。

アクセス・インテリジェント・ソリューションズ株式会社
https://www.acxess-is.com